macaron books presents 北とぴあ演劇祭2012参加作品

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macaron booksが北とぴあ演劇祭で“少女病”を上演してから、早二年。
文学作品への大胆なアプローチ、性的コンプレックス満載のシナリオ、
そして、舞台上に散乱するアダルトグッズ、その内容は衝撃的でした。
今でも、受け入れて下さった関係各位には感謝するばかりですし、
逃げずに描ききったことが俺自身良い経験となっています。

そういうことをやった、やってしまった連中として、
再びこの演劇祭に参加する。今回は、まずそこが悩みどころでした。
一体何をやったらいいのか、二年前にやり切ってしまったのではないか、
スタートの段階から会議は難航しました。
二年前のアンケートに寄せられた、アレンジして欲しい文学作品、
それらを読み比べても、今ひとつしっくり来ない。
スタッフから寄せられる案も、“少女病”ほど響きませんでした。

しかし、そんな紆余曲折の中、候補として上がっていた一冊の本が、
どうしても俺の頭から離れませんでした。
それこそが、谷崎潤一郎著“痴人の愛”。
当初、俺はスタッフからこの作品を推薦された際、
「絶対にこれを原作にするのは無理だ」と思いました。
なぜなら、余りに衝撃的すぎたからです。
原作の世界観が強固すぎて、アレンジの余地が全くない。
それほどまでに、強いインパクトを受けてしまったのです。

そうして、一度は候補から外した“痴人の愛”でしたが、
前述のように様々な作品を比べている内に、
どんどんと俺の中でその存在が大きくなっていったのです。
「絶対に無理だ」という想いは、いつの間にか、
「どうにかして受け止めたい」へと変化していました。
その結果、俺はこの“痴人の愛”と、自分が描くべきテーマが、
絶妙に重なる点へと至りました。それは、『幸福論』です。

西洋文化の流入、近代化に伴う男女関係の変化を足がかりに、
衝撃的な性の形態、毒婦の極みを描いた谷崎版に対し、
佐古田版は、現代社会で多用されている「若者の○○離れ」をキーワードに、
どこにでもいる普通の青年を通して、俺達にしか発せられないメッセージを、
しっかり演劇且つエンターテイメントとして発していきます。

ただ、そうは言っても原作が原作、もちろん一筋縄ではいきません。
だから今、俺は貴方がこの作品を見終わった後、
一体何を思うのか、誰と何を語るのかが、気になって仕方ありません。
情念を込めて書いたからこそ、この作品は貴方のことも揺さぶります。

“痴人の愛”は、今この混沌とした社会に生きる、
老若男女全ての人が出会う意味のある作品です。
どうか見届けてください。揺れて、確かめてください。
そして、貴方にとっての愛を、俺に見せていただけると幸いです。

TOPimaget Photo by:Jaci Berkopec